E-commerce Marketing
福岡DXPO2026で見えた日本ECの現在地を韓国EC専門家が解説。AI・CRM活用、LINE連携、顧客データを売上やLTV向上につなげるヒントを紹介。

はじめに
こんにちは、データライズのCSO兼日本法人代表取締役のパク ミンソンです。
2026年10月22日(木)・23日(金)の2日間、マリンメッセ福岡A館で開催された「DXPO福岡」に、データライズジャパンが出展しました。
今回の展示会を通じて特に印象的だったのは、AIへの関心が急速に高まる一方で、実際の売上向上や顧客データの活用に結びつけるためには、まだ多くの課題が残されているという点です。
会場では、生成AIの導入支援や業務効率化、セキュリティ対策などのテーマが目立ちました。一方、EC事業者にとって重要なリピート購入の促進や顧客生涯価値(LTV)の向上、顧客データを活用したマーケティング自動化については、今後さらに活用が広がる余地があると感じました。
データライズジャパンも今回ブースを出展し、「Shopify×LINE×AIで顧客データを売上につなげる」をテーマに、韓国EC市場での取り組みを交えたセミナーを開催しました。
本記事では、展示会で実際に見聞きした内容をもとに、日本のEC事業者が直面する課題やAI活用の動向、そして韓国EC市場との共通点・相違点についてご紹介します。
1. 展示会で見えた日本企業の関心領域
① AI活用の大きな課題は「導入」から「定着」へ
今回の展示会で、特に存在感を示していたテーマがAIです。
AIエージェントに関する専門展示も設けられ、企業の業務効率化や生産性向上に向けたさまざまなサービスが紹介されていました。
しかし、セミナーを通じて印象に残ったのは、AIの具体的な成果だけではなく、「いかに社内に定着させるか」「どう安全に運用するか」という議論が多かったことです。
主なテーマとしては、次のようなものがありました。
従業員のAIリテラシー向上と社内教育
生成AIの導入後における活用促進と組織改革
AIエージェントを活用した業務効率化
情報漏えいやサイバー攻撃への対策
AI時代に必要な情報管理・セキュリティ体制の構築
こうした傾向の背景には、企業規模によるAI活用の差もあると考えられます。
東京商工リサーチが2026年に公表した調査によると、生成AIを組織的に活用している企業の割合は、大企業で59.1%、中小企業で32.3%でした。
AIの活用が着実に広がる一方、その導入状況や活用体制には企業規模による差が見られます。
今回の福岡DXPOでは、AI導入後の具体的な成果を追求する以前に、まずは組織としてAIを使いこなすための環境を整えたいというニーズが強く感じられました。
② EC向けCRMには、さらなる活用の余地
EC関連の展示エリアでは、ECサイト構築、カートシステム、物流、梱包資材、越境ECなどのサービスが多く紹介されていました。
一方で、EC事業者が保有する顧客データを分析し、リピート購入や売上向上につなげるCRM・マーケティング自動化に特化した展示は、比較的限られていた印象です。
もちろん、日本国内でもEC向けCRM市場は発展しています。
特に、LINEを活用した顧客コミュニケーションや、購買履歴に基づくパーソナライズ施策は、多くのEC事業者にとって重要なテーマになっています。
ただし、地方の中小規模EC事業者まで、こうした取り組みが十分に浸透しているとは限りません。
今回の展示会を通じて感じたのは、顧客データを持っていることと、そのデータを売上向上に活用できていることの間には、まだ大きな隔たりがあるという点です。
特に少人数で運営するEC事業者にとっては、データを分析する専門人材の確保や、継続的なマーケティング施策の実行が大きな負担となります。
こうした課題を解決する手段として、AIを活用したCRMやマーケティング自動化には、今後さらに需要が高まる可能性があります。
③ 新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の価値を高める時代へ
会場では、EC市場の成長環境の変化を踏まえ、AIや自動化を活用して売上を伸ばす方法を紹介するセミナーも見られました。
EC事業者にとって、新規顧客の獲得は引き続き重要な課題です。
しかし、広告費の上昇や競争の激化などを背景に、新規顧客の獲得だけに依存した成長戦略には限界があります。
そこで重要になるのが、一度購入した顧客との関係を継続し、再購入につなげる取り組みです。
例えば、購入履歴やサイト内での行動データから顧客の興味・関心を把握し、適切なタイミングで商品を提案することで、顧客体験の向上と売上拡大の両立が期待できます。
「いかに新規顧客を集めるか」だけでなく、「獲得した顧客とどのような関係を築くか」。
今後のEC成長を考えるうえで、CRMの重要性はさらに高まっていくと考えられます。
④ SEOからAIOへ。AIに選ばれる情報づくり
もう一つ注目したいのが、AI検索を意識したコンテンツ戦略です。
展示会では、従来のSEOに加えて、AIO(AI Optimization)や、AIが参照しやすい情報源の整備をテーマとしたセミナーも見られました。
これまでは、Googleなどの検索エンジンで自社サイトを上位表示させることが、Webマーケティングにおける重要な施策の一つでした。
しかし、生成AIを活用した情報収集が広がるにつれ、企業やブランドの情報がAIによってどのように理解され、回答に利用されるかも重要になりつつあります。
商品情報やコンテンツの正確性を維持し、AIにも活用しやすい形で整理することは、これからのECマーケティングにおいて新たな課題となりそうです。
2. 印象に残ったセミナー|AIで生まれた時間をどう活用するか
今回参加したセミナーの中で、特に印象に残ったのが、AIエージェントの導入・定着支援に関する講演です。
その中心にあったのは、次のような考え方でした。
「AIによって業務時間を削減しても、その時間の使い道が決まっていなければ、企業の成果にはつながらない」
例えば、これまで数時間かかっていた見積書の作成業務が、AIによって短時間で完了するようになったとします。
業務効率は改善しますが、それだけで企業の売上や利益が増えるとは限りません。
大切なのは、削減できた時間を新規顧客への提案や、新しいサービスの企画、顧客とのコミュニケーションなど、より価値の高い業務へ振り向けることです。
セミナーでは、AIを組織に定着させるために、経営層が活用方針を明確にし、現場の成功体験を増やしながら、組織全体へ展開していく重要性が紹介されていました。
また、もう一つ印象に残ったのが、「AIエージェントは、データがなければ十分に機能しない」という指摘です。
AIモデルそのものが優秀でも、各企業の業務内容や顧客情報、社内に蓄積されたノウハウを理解していなければ、適切な判断を行うことは難しくなります。
これはECマーケティングにも共通する考え方です。
AIの能力を最大限に活かすには、その基盤となる顧客データが整備されていることが欠かせません。
そして、人間の役割も、単純な作業を繰り返すことから、AIに目的を伝え、結果を確認し、最終的な判断を行うことへと変化していくと考えられます。
3. 日本と韓国のEC市場に共通する課題
Datarizeは韓国発のECマーケティングソリューションとして、韓国市場で培ってきた知見を日本市場にも展開しています。
今回の展示会を通じて、日韓のEC市場には異なる特徴がある一方、共通する課題も多いことを改めて感じました。
① 新規顧客獲得からリテンション・LTV向上へ
日本と韓国のEC事業者に共通する重要なテーマが、既存顧客との関係強化です。
広告によって新規顧客を獲得するだけではなく、購入後も継続的にコミュニケーションを取り、再購入へつなげる仕組みが求められています。
顧客の行動や購買履歴をもとに、一人ひとりに適したタイミングでアプローチするCRMは、両国のEC事業者にとって重要な成長戦略の一つです。
② メッセンジャーを活用した顧客コミュニケーション
日本ではLINE、韓国ではカカオトークが、企業と顧客をつなぐ重要なコミュニケーションチャネルとなっています。
こうしたメッセンジャーとECサイトの顧客情報を連携させることで、購買履歴や行動データに応じたコミュニケーションが可能になります。
例えば、商品を閲覧したものの購入に至らなかった顧客へのリマインドや、過去の購入商品に関連する商品の提案などです。
日韓で利用するプラットフォームは異なりますが、メッセンジャーを顧客接点として活用し、CRMと連携させるという方向性には共通点があります。
③ AI活用の目的は、導入そのものから成果へ
AIを導入すること自体が目的ではなく、売上向上や業務効率化といった具体的な成果につなげることが重要になっています。
マーケティング担当者の業務を支援するだけでなく、データ分析から施策の提案、実行までをAIで効率化する取り組みは、今後さらに広がっていくでしょう。
4. 日本と韓国のEC市場で異なるポイント
一方で、日本と韓国では、EC向けCRMの普及状況やAIの導入背景に違いも見られます。
韓国のEC市場では、顧客データを活用したマーケティング自動化やパーソナライズ施策が発展してきました。
DatarizeのようなEC特化型CRMも、こうした市場環境の中で成長してきたサービスの一つです。
一方、日本ではEC事業者の規模や業種によってCRMの導入状況に差があり、特に少人数で運営する事業者にとっては、導入後の運用負担が課題になりやすいと考えられます。
比較項目 | 日本 | 韓国 |
|---|---|---|
EC向けCRM | 事業規模によって導入・活用状況に差がある | EC特化型CRMや自動化施策の活用が進んでいる |
顧客との接点 | LINEが重要なチャネル | カカオトークが重要なチャネル |
AI活用の課題 | 導入・定着、社内教育、セキュリティなど | 施策への活用、成果の最大化など |
マーケティングの方向性 | リピート施策やデータ活用の高度化 | パーソナライズや自動化の高度化 |
今後の共通テーマ | 顧客データとAIを活用したLTV向上 | 顧客データとAIを活用したLTV向上 |
※上記は市場全体を一律に分類したものではなく、今回の展示会での観察と、日韓EC市場における一般的な傾向を整理したものです。
重要なのは、どちらの市場が進んでいるかという単純な比較ではありません。
それぞれの市場が持つ特徴や課題を理解し、成功事例を自社の環境に合わせて活用することです。
韓国市場で培われたCRMやマーケティング自動化のノウハウは、日本のEC事業者にとっても、新しい成長のヒントになると考えています。
5. AI時代だからこそ重要になるセキュリティとデータ管理
今回の展示会では、AI活用と並んでセキュリティ対策にも大きな関心が集まっていました。
ちょうど開催期間中には、プログラミング言語「PHP」に深刻な脆弱性が発見され、国内外で注意喚起が行われました。
今回公表されたのは、CVE-2026-109618およびCVE-2026-109619という脆弱性です。
これらは、条件によって外部から不正なコードが実行されるおそれがあるもので、2026年10月21日に修正版が公開されました。
この脆弱性自体は生成AIに起因するものと確認されたわけではありませんが、企業がデジタル技術を活用するうえで、セキュリティ対策が欠かせないことを改めて示す出来事となりました。
EC事業者は、顧客の個人情報や購買履歴など、多くの重要なデータを保有しています。
AIやCRMの導入を進める際にも、データの管理方法やアクセス権限、外部サービスとの連携などについて、適切な安全対策を講じる必要があります。
一方で、セキュリティへの不安から新しい技術の活用を避けてしまえば、業務効率化や顧客体験の改善といった機会を逃す可能性もあります。
これからの企業に求められるのは、安全性を確保しながら、AIや顧客データを事業成長に活用できる仕組みづくりではないでしょうか。
6. データライズジャパンが今回の展示会で伝えたかったこと
今回、弊社は「Shopify×LINE×AIで顧客データを売上につなげる」をテーマに出展し、セミナーを開催しました。

私たちが特にお伝えしたかったのは、顧客データを分析するだけでなく、そのデータを活用して、実際のマーケティング施策や売上向上につなげることの重要性です。
ECサイトには、日々さまざまな顧客データが蓄積されています。
しかし、そのすべてを人の手で分析し、一人ひとりに適した施策を継続的に実行することは簡単ではありません。
特に少人数でECを運営する事業者にとって、マーケティング専任者を確保し、分析から施策の実行までを行うことは大きな負担となります。
Datarizeは、ECに特化したデータ分析とマーケティング自動化によって、こうした課題の解決を支援します。
例えば、購入可能性スコアなどの独自指標を活用して顧客の購買可能性を把握し、適切な対象者へのアプローチを検討できます。
また、日本市場において重要なLINEとの連携を通じて、顧客との継続的なコミュニケーションにも活用できます。
今回の展示会では、Shopifyを利用するEC事業者や関連パートナー企業とも直接お話しする機会がありました。
AIの活用方法や、これまで利用してきたCRMとの違いなど、具体的な質問もいただき、EC事業者が抱える課題やニーズを直接伺うことができました。
おわりに|AIを「導入する」から「売上につなげる」へ
今回の福岡DXPOを通じて感じたのは、AIへの関心が高まる一方で、それを実際の業務や成果に結びつける仕組みづくりが、これからの重要なテーマになるということです。
特にEC事業者にとっては、AIの導入そのものよりも、顧客データをどのように活用し、リピート購入やLTVの向上につなげるかが重要です。
そして、その実現には高度な技術だけでなく、少人数でも継続して運用できる仕組みが求められます。
韓国では、ECに特化したCRMやマーケティング自動化の領域で、さまざまな取り組みが積み重ねられてきました。
データライズジャパンは、こうした韓国市場で培われた経験やノウハウを活かし、日本のEC事業者が抱える課題の解決に貢献していきたいと考えています。
AIを使うことが目的ではなく、AIとデータを活用して、持続的なECの成長を実現すること。
今回の展示会で得られた学びやお客様の声を、今後のサービス提案や情報発信にも活かしてまいります。
ご来場いただいた皆様、そして弊社のブースやセミナーにお立ち寄りいただいた皆様、誠にありがとうございました。
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